新潟市中央区にある、0・1・2歳児専門の小規模保育園ばとぅーるこども園では、
今年も子どもたちと一緒に夏野菜の栽培を始めました。
今回育てているのは、オクラ、トマト、ナスです。
小さな手で土にふれ、苗を見つめ、水をあげ、「おおきくなあれ」と声をかける。
そんな日々の積み重ねは、単なる野菜づくりではありません。
私たちは、この“育てる体験”そのものが、子どもたちの心や脳の発達に
大きくつながっていると感じています。

乳幼児期は、「見る」「触る」「においを感じる」「味わう」といった五感の刺激を
たくさん受けることで、脳の神経回路が豊かに育っていく大切な時期です。
特に0.1.2歳は、人生の土台となる感覚や感情、人との関わりを育む時期でもあります。
だからこそ私たちは、“本物にふれる経験”を大切にしています。
苗を植える時、子どもたちは土の「ふわふわ」「つめたい」「なんかついてる」と、
一人ひとり違う感触を感じて反応を見せてくれます。
大人にとっては当たり前の感覚でも、子どもにとってはすべてが新しい発見です。
葉っぱにそっと触れてみる子。じっと観察する子。水やりが楽しくて何度もやりたがる子。
虫を見つけて指をさす子。
そのすべてが学びです。
近年、「非認知能力」という言葉が注目されています。
これはテストでは測れない力のことで、
好奇心、集中力、自己肯定感、思いやり、やり抜く力などを指します。
幼少期の体験は、この非認知能力を育てるうえでとても重要だといわれています。
野菜づくりには、その要素がたくさん詰まっています。
毎日観察し、「昨日より大きくなったね」と変化に気づく力。
水をあげながら「元気かな?」と想像する気持ち。
収穫まで待つ経験。友だちと一緒に喜ぶ経験。
それらはすべて、子どもの内面を豊かに育てていきます。

そして、私たちが食育の中で特に大切にしているのが、「自分で育てる」という体験です。
今はスーパーへ行けば、季節を問わずさまざまな野菜が並んでいます。
けれど子どもたちにとっては、野菜がどのように育ち、どんなふうに実るのかを知る機会は
意外と少なくなっています。
トマトは最初から赤いわけではないこと。
ナスにはかわいい花が咲くこと。
オクラが空に向かって育つこと。
毎日見ているからこそ気づける発見があります。
「まだちいさいね」
「おおきくなってる!」
「みどりだったのに、あかくなった!」
そんな言葉の一つひとつが、子どもたちの興味や関心を育てています。
そして、自分で育てた野菜には特別な愛着が生まれます。
普段は野菜が苦手な子でも、「自分が水をあげたトマト」「自分で見つけたナス」となると、
不思議と“食べてみたい”という気持ちが芽生えていきます。
実際に、ばとぅーるこども園は毎年お野菜を育てていますが
「いつもは食べないのに、一口食べられた」「自分から手を伸ばした」というこども達を
毎年見守ってきました。
もちろん、無理に食べさせることはしません。
まずは触ってみる。
においを感じてみる。
切った断面を見てみる。
調理の様子をのぞいてみる。
そして、“食べてみようかな”と思える瞬間を待つ。
ばとぅーるこども園では、その気持ちを大切にしています。

Screenshot
食育とは、単に栄養を学ぶことではありません。
「食べることって楽しい」
「これは自分が育てた野菜」
「みんなで食べるとおいしい」
そんな温かい記憶を積み重ねることだと思っています。
乳幼児期の、『おいしい』『うれしい』という感情は、食への安心感につながります。
そしてその安心感は、「食べてみよう」という意欲を育て、苦手な食材への挑戦にも
つながっていきます。
特に0〜2歳の時期は、「好き」「嫌い」がはっきりし始める時期でもあります。
しかしそれは、決してわがままではありません。
初めて見る形や色への警戒心。
独特な食感への戸惑い。
苦味や酸味への敏感さ。
子どもたちは、自分の感覚を使って一生懸命に食べ物を理解しようとしているのです。
だからこそ私たちは、「食べなさい」ではなく、
「育ててみよう」「見てみよう」「触ってみよう」という関わりを大切にしています。
畑やプランターでの経験を通して、野菜は知らないものではなく、
自分の身近なものへと変わっていきます。

便利なものが増え、なんでも簡単に手に入る時代だからこそ、
“育つまで待つ経験”や、“自然にふれる時間”は、とても貴重なものになっています。
種をまき、水をあげ、太陽の光を浴びながら成長を待つ。
その過程には、「命を大切にする心」が自然と育まれています。
そして何より、みんなで経験することで安心し、「やってみたい」という意欲を広げていきます。
「できたね」「大きくなったね」と共感してもらう時間は、自己肯定感を育てる大切な関わりです。
私たちの保育園では、これからも食育を通して、“生きる力”の土台を育んでいきたいと考えています。
オクラ、トマト、ナスの成長を楽しみにしながら、
子どもたちの心もまた、毎日少しずつ大きく育っています。
野菜を育てることは、命を育てること。
そしてそれは、未来を生きる子どもたちの脳と心を豊かに育て、
「食べることを好きになる力」を育むことにもつながっているのです。
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